2010年01月04日

Googleは違法会社で、ヤフーは合法会社か?

ヤフーの井上社長の記事が、
日経ビジネスオンラインに掲載されていました。

グーグル?すごいとは思わないね?

「インタレストマッチをどう考えているか」
「米ヤフーのMSとの提携に対する考え」

などのところは、
広告主には大いに関係のあるところで、
読んでおいた方がいいと思います。


この記事の中で、
注目すべきポイントは、

「グーグルのすごいは、いずれもグレーゾーンでは(法務的に)」

と井上社長が苦言を言っているところ。


「検索連動広告は米ヤフーの真似だし、
ストリートビューはすごいけど一種の「のぞき」。
ブックサーチは著作権無視のコピーだ。
YouTubeだって、違法の動画がトラフィックの多くを占めている」


このへんのところですね。


さて、
これからの日本は間違いなく訴訟社会になり、
法務知識がビジネスマンにとっては、
とても重要になるので、
このポイントを私なりに解説しておきます。




このブログを読んでいる、
ほとんどの人は、

「法的にやってはいけないこと、やってよいこと」

というのは、
「事前に」決定していると、、
勘違いしていると思いますが(以前の私もそうだった)、
実際には違うのです。


実は、
「何をもって”法律違反か”」
を判断するのは、

「最終的に訴訟で争って、裁判官が判断を下した瞬間」

なのです。


なので、
「誰がどうみたって違法行為」
と思われるようなことも、
裁判所で、「違法ではない」と判断されると、
それは違法行為ではなくなります。


例えば、
2004年に、
Googleは米大手保険会社のGeicoに訴訟を起こされました。

Googleで「Geico」という商標を取った会社名を使って検索すると、
結果のなかにライバルの広告が表示される。
これは商標の侵害にあたるとして、
GeicoがGoogleを訴えたわけです。

フツーに考えれば、Googleは負けそうですね。
なんたって他人の商標を勝手に使って、それで儲けてる、
といわれても仕方ないわけですから。
でも、
バージニア東部連邦地方裁はこれは違法ではない、
と判断しました。
だから違法ではないのです。



これは逆の視点もあって、

「今まで合法とされてきたことが、
突然、違法行為、と裁判所で言われて違法になる」

というパターンもあります。


このパターンで、
2兆円の市場が生まれたのが、
最高裁のグレーゾーン金利違法判決による、
「過払いビジネス」
です。

先のGoogleの商標の件も、
他の企業が同じケースで訴えて、他の裁判所で、
「いままで合法だったけどこれからは違法にするから」
という風になることもあるわけです。


さらに言うと、

「明らかに法律違反だけど、和解金を支払うことによって、
自分のビジネスにしてしまう」

というパターンもあります。

例えば、
GoTo.comという会社が1997年にアメリカで設立されました。

この会社は、
今で言う「キーワード広告」の仕組みを考え、
特許を取りました。

Googleは、2000年に、
このGoTo.comのキーワード広告の仕組みと同じものをつくり、
検索連動型広告を出すことによって、
売上、利益を出すようになりました。
これが、現在のGoogleアドワーズ、です。

で、
このGoogleアドワーズは、
GoTo.comから、「特許違反だ」と訴えられたわけです。

で、
どうも裁判の判断も違反となりそうだったのか、
Googleは、和解金を支払うことを提示して、
GoTo.comがこれを受け入れて、
和解成立となりました。

値段にして約270億円。

現在、2兆円近い売上のうち、97%がキーワード広告経由、
というGoogleにしてみれば、
この和解金の費用は極めて安い投資だった、
といえるでしょうね。

この和解が成立していなければ、
今のGoogleはありません。

GoTo.comとは、
現在のオーバーチュア(ヤフーリスティング)です。


資本主義、
というのは「トラブルをお金で解決できる」社会なので、
こういう芸当も可能になってしまいます。

これを倫理的にどう思うか、
は人それぞれでしょうけれども。



実は、
さらにいえば、

検索エンジン会社(ヤフー、Google)というのは、
基本的に著作権違反をしているメディアだ、
とも言える可能性があります。

(別に批判しているわけでもなんでもないので、
誤解のないように)

「誰かがつくったホームページを、
ロボットで収集して、
それを他人に検索経由で見せる無料サービス」

でお客さんを集めて、
広告で売上を立てる、というのが、
検索エンジンのビジネスモデルなわけです。

で、基本的にGoogleもヤフーも、
メディアとしてのコンテンツは、
自分ではつくらないで他人がつくったコンテンツ、
で成り立たせています。
当然、そこには著作権が発生します。

つまり、
コンテンツを作った人は、
(要するに私たちですよ)
企業であれ、個人であれ、誰であっても、

「ヤフーやGoogleは、
私がつくったコンテンツを勝手に使っているじゃないか。
キャッシュはともかく二次使用は著作権違反だ!」

と主張して、訴訟を起こして、
損害賠償請求をすることは可能なんですよ。

実際に、
ヨーロッパでは検索エンジンの収集行為は、
著作権侵害、という判例も出ているようです。

なぜ、
この明らかに違法と思われるメディアの行為が、
問題にならないか、
といえば、

「著作権違反をされる側に金銭的な損害が発生しない。
むしろ、
金銭的な利益をもたらす」

というだけのことです。

つまり、
違法である可能性は高いが、
「損害が発生しないので、訴訟にならない」
ということなのです。


(※日本では今年から合法になるそうです。
コメント参照。
違法をビジネスのイノベーションで合法化した、
といういい例なのではないでしょうか)





わかりますでしょうか。



まとめるとこういうことです。


1)法律違反かどうかは、事前にきまっていることではなく、
訴訟になって司法が判断してはじめて決まる。
(ほとんどがグレーだと言ってもよいくらい)

2)合法とされてきたことが、ある日突然、
違法とされることもある。

3)違法と判断されたとしても和解金を支払って、
問題を解決することもできる。
さらにビジネスとしての仕入れにすることもできる。

4)明らかに法律違反のことであっても、
迷惑がかからなければ、
訴訟にすらならないことも多い。
むしろ歓迎されることもある。
(それで法律が改正されることもある)



これでGoogleが、
いくら著作権違反が大問題、
といわれてもyoutubeを推し進め、

プライバシー侵害、
といわれてもGoogleストリートビューを
推し進めるか、

が少しわかるのではないでしょうか。


要するに、
Googleという会社は、
「法律という壁にチャレンジする」会社、
なわけです。



ビジネスは、
競争優位がすべて、
といっても過言ではありません。

他人がやらないこと、
他人が手を付けないこと、
他人がやりたくても手を付けられないこと、

をあえてやるから、
価値が出るわけです。

法的リスクを果敢に取り入れて対処ができるGoogleと、
最初から法的リスクを避ける日本のヤフーでは、
その将来性の差は歴然かもしれません。



日本は法治国家ではなく(これは言い過ぎだが)、
情緒国家なので、

「法的トラブルのリスクを取ってビジネスをする」

という風土が、
なかなか根付かない、
という背景もあると思います。

日本の裁判所は、
論理だけではなく、社会的情緒を優先することも多く、
あまりにも不確実性が高くて、
ビジネスとして手を出しにくいわけですね。

また、
日本では法律は「守るもの」と考える人が多く、
アメリカでは法律は「つくるもの」と考える人が多い、
ということも関係しているかもしれません。
(訴訟にチャレンジして勝てば、
判例によって法律が新たに作られる可能性が出てくる、ということです)




良くも悪くも、
これからの時代、
日本は訴訟社会になっていきます。

というか、
もうなっています。



法的なリスクにチャレンジし、
適切に対処できる会社と、
そうでない会社には、
これからのネットビジネスでは、
大きな違いが出てくると思います。

Googleの例をあげるまでもなく、
法的なハードルの向こう側には、
莫大なチャンスがあるからです。

これは大企業だけの話ではなく、
これからの中小企業の重要なテーマでしょうね。


(了)




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http://twitter.com/hidenoritakii




Posted by hidenori37 at 10:22│Comments(9)
この記事へのコメント
こんにちは、いつも応援しています。
今日はご挨拶だけしにきました。

ブログの更新楽しみにしています!
Posted by あけみ at 2010年01月04日 21:48
ひとつだけ。誤解を招くといけないので。

検索エンジンと著作権ですが、米国ではFair Useという考え方があり、これにより、見做し(?)合法とされています。したがって、この件で米国で訴訟しても勝てません。

また、日本でも先だって1/1に改訂された著作権法が有効になり、検索エンジンの事業や情報解析の為の複製が合法になりました。
http://www.cric.or.jp/db/article/a1.html
の第四十七条の六が相当します。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/171/1251917.htm
でその際の議論及び差分をみることが出来ます。
Posted by ゆきち at 2010年01月05日 00:12
あけましておめでとうございます。
滝井さんのブログを楽しみにして拝見しております。
今回の記事、朝5:00に読んだのですが・・・
度肝を抜かれました。
真実を知っているのと知らないのとではとんでもない差が付いてしまうことを実感しました。
つい、感動してコメントを書き連ねています。
ヤフーがどう、グーグルがどうだと論議を重ねるよりも、「法的な壁を超える」視野と覚悟がビジネスで成功するための絶対条件になるのかと痛感しました。
ありがとうございました。
Posted by propo at 2010年01月05日 05:52
今話題のページみたいなところから
飛んできて読ませていただいたのですが
僕とか完全にヤフー的な法律の捉え方をしていたので目から鱗でした
読みやすかったしおもしろかったです
Posted by nob at 2010年01月05日 14:25
元記事の
「すごいのはすごいけど、そういうことを企業として
やってしまってもいいのか。ヤフーなら絶対に、手前で
法務からトップがかかる。 」という社長のコメントを見るにつけ、事業側の社員がかわいそうだなーと思いました。

どんなささいなことでも危なければ法務が止めるのは当たり前で、
それを事業がいちいち聞いていては話になりません。

日本の企業でもグレーゾーンでがんばっているところは
けっこうあると思っているのですが。Googleほどおおっぴらでは
ないとはいえ。

SoftBankだってグレーゾーンを攻めたような。
Posted by mumumu at 2010年01月05日 18:18
記事拝見致しました。
違法かどうかは裁判の結果次第ということですね。

でも、違法か合法化はさておき、確実に迷惑がかかる人達が居るのを知っていて、敢えて強行し裁判で違法性を問う、という企業
姿勢はどうなんでしょうね。

そんな企業が増えたら、たまったもんじゃありません。一般人さえ自分の権利が企業に侵害されまくって、裁判を起こして対抗し
なくてはならなくなります。生活を破壊されますよ。

ストリートビューで自宅の敷地の中や窓から見える部屋の中を全世界に公開されていることすら知らないでいる人
(その多くはインターネットを使っていない人々でしょう)が日本だけでも何万人もいるかと思うと空恐ろしいです。
インターネットを使っていない一般人の方が悪いんでしょうかね....。
(ストリートビューは強盗団の侵入先選定や侵入方法検討にも使われているでしょうに)
Posted by lark at 2010年01月06日 02:37
(ストリートビューは強盗団の侵入先選定や侵入方法検討にも使われているでしょうに)

地図で土地を確認する泥棒なんて地図が生まれた最初の時代からあったと思われ。
Posted by ナイフがあるから人が殺された論ですか? at 2010年01月07日 09:29
地図で土地を確認する泥棒なんて地図が生まれた最初の時代からあったと思われ。

地図とストリートビューの違いがお分かりになりませんか?
ストリートビューなら、土地の広さだけでは分からない所得の高低(家具・家の外観・車)や、
高齢者の家かどうか(家や物の古さ・手入れの具合)、人気のない場所(前後の交通量や街灯の有無等)かどうか、
等々、その場に行かずに物色できますよね。単なる地図でそこまでうかがい知ることは不可能です。
Posted by lark at 2010年01月08日 02:22
補足です。
>ナイフがあるから人が殺された論ですか?
いいえ。ストリートビューは、個人のプライバシーを侵しているというところが問題なんです。
強盗団の物色ツールとしてのストリートビューも、まさにプライバシーが掲載されているところに最大の価値があるわけです。ナイフのような一般の道具の話しはここでは使えませんよね?

問いますが、貴方は、ストリートビューと同じようにどこかの他人の家の敷地内を通りから撮影して、
それをインターネット上で勝手に公開したりしますか? やらないとすれば、何故やらないのでしょう?
Posted by lark at 2010年01月08日 02:40