「掲載順位が上がってクリック率が上がると品質スコアも上がる」の間違い

投稿日:2013年1月23日



Googleアドワーズには品質スコア、
Yahoo!リスティング広告には品質インデックス、
という10段階の広告を評価する仕組みがあることはみなさんよくご存じですね。

品質1と品質10では、クリック単価が何倍にも変化することがありますから、
とっても重要なわけです。

同じキーワードの同じ順位に広告を出すにしても、
A社は品質が高いのでクリック単価が100円でよくて、
B社は品質が低いのでクリック単価が500円も払わなきゃならん、
ということも現実に起こりえます。


で、先日、
こんな事件がございました。

ある大手広告代理店が運用しているリスティング広告のアカウントで、
「なにをどう考えてもこんな低い品質になるはずがない」
という疑問から、私にアカウント内容をセカンドオピニオンとして評価してほしい、
という相談がありました。

で、
そのアカウントを管理している某広告代理店のスタッフさんと協議する機会がありました。

クライアントさんは、
その某代理店担当の方から、

「入札金額を上げて掲載順位をあげれば、クリック率が上がって品質もあがります」

と言われたそうです。
要するに、足りないのは予算であって、広告文の善し悪しではない、
ということが言いたかったようです。

さて、
これはもちろん、明らかな「間違い」です。

上記の間違ったロジック同様、
「入札金額を下げると掲載順位が下がって、クリック率が下がってしまうから品質も下がる」
という話も間違いです。

さらには、
「品質が上がると掲載順位が上がり、それによってクリック率が上がるので、さらに品質がアップする」
なんていうびっくりな(笑、記載を見たことがありますがこれも間違いです。

数年前から、
あまりPPC広告に詳しくなくて、このような明らかな間違いを堂々と信じてしまっている人が、
WEBマーケティングのコンサルタントさんや、
あるいは媒体側のサポートのスタッフさんの中にも、ちょっとづつ増えてしまっているようで、
今一度整理しておいた方がいいかな、と思いブログに書いておきます。
本人間違ってるだけならいいんですが、広告主さんが誤解したままでいるのはかわいそうなので。

品質スコアに与える影響として、「クリック率」が大きな影響を与えることは間違いありません。
しかし、
入札金額を上げることで掲載順位を上げ、順位の影響でクリック率が上がっても、
品質スコアには影響はないのです。

いくつかファクトを上げておきます。


広告の掲載順位は品質スコアを決定する要素ではありません

10 の心得という、 AdWords ヘルプより。
「広告の掲載順位が高くても、品質スコアが高くなることはありません」
という明確な記載があります。

Inside AdWords-Japan: 広告品質評価システム更新のお知らせ

アドワーズ公式ブログより。
「単純に CTR(クリック率) だけを比較すると上位に表示される広告のほうがクリックを獲得しやすい、その結果高い CTR を得られやすいと考えられるので、CTR だけを評価指標とすると上位の広告がより有利な条件で競争できてしまうことが想定されます。
こういった広告掲載位置による有利不利を是正し、広告掲載位置の CTR への影響も考慮して、平等な条件下でシステムが正確な品質スコアを計算できるようにする」
という記載があります。

AdWords Agency Blog: Quality Score fact of the week

Googleエージェンシーブログ(英語)より。
「A higher bid will not improve your Quality Score(入札価格を高くしても、品質スコアは改善されませんよ)」
と書かれています。
さらには、
「Your Quality Score is determined by a number of factors, clickthrough rate (CTR) foremost amongst them, and is normalized to compensate for the higher CTR that ads in higher positions accrue(あなたの品質スコアは、たくさんの要素から決定される。中でもクリック率は最も考慮される。ただし、順位が高いことによるクリック率の高さは、正規化によって補正される)」
との記載もあります。
ちなみに、この記事を書いている人は、Dan Friedmanというハーバード出のGoogleのマーケティングセクションの社員さんです。
Daniel Friedman – Google+

ちなみに言うと、
これは「最近こうなった」という話ではなくて、
10年以上前にGoogleアドワーズがはじまってからずっとこういう仕組みです。
じゃないと、
品質スコアの判定なんて成り立たないからです。


検索キーワード連動型広告は、
検索結果という一次元の世界に(見た目は二次元だが)、
複数の広告が並ぶわけですから、
必然的に、上から下、という「順番」が発生します。

当然、上にある広告の方がクリックされやすいわけですから、
キーワード広告で1位で広告を出していれば、たいていの場合、2位以下で出している場合よりも高いクリック率になります。

この場合の「高いクリック率」というのは、
「広告文が良いからクリック率が高い」わけではなく、
「掲載順位が高いからクリック率が高い」というだけの場合もあり得ます。
つまり、広告の品質の善し悪しでは差が付かなくて、クリック率差は順位によってのみ生じるということもあり得るわけです。

もしも、
「掲載順位を上げることでクリック率を上げて、品質が上昇する」
のが事実であれば、
「掲載順位が低くてクリック率が低いと、すべからく品質は低くなる」
という逆もまた真なり、ということになってしまいます。

当たり前ですが、
実際に運用してみればわかりますけれど、
「平均掲載順位9位でクリック率0.5%しかないけど品質スコアは8」
というようなケースは頻出します。

実例↓

この実例を見てもらえばわかるとおり、
平均掲載順位が8位とか9位とかでクリック率が低くとも、
8~10という高い品質は付くわけです。
「掲載順位が下がってクリック率が下がると品質も下がる」
が正しければこのようなことにはなりません。

実務をやってればすぐわかりますし、
実務をやってなくても冷静に考えれば「入札額を上げることでクリック率が上がると品質も上がる」というロジックは、世界観として到底成立し得ないということはわかると思います。


「でも実際、順位が高い方がクリック率が高いわけで、
それでどうやって品質スコアを計算してるの?」
という疑問は沸くと思います。

これは、「normalized to compensate(補正のための正規化)」
という上記の英語サイトに書かれた一文にヒントがあります。

Normalize、という英語は日本語にはとても訳しにくいのですが、
一般的には「正規化」「標準化」「正常化」などと訳されます。
競馬のハンデキャップ戦のようなもので、牝馬よりも馬力でまさる牡馬にハンデ重量を背負わせて、
できるだけ同じ条件で競わせる、という考え方になります。
簡単にいえば、「同じ条件でないものを、同じ条件にそろえて比較する」、という考えだと思ってもってOKです。

検索結果において、順位が高いほうがクリック率が高いのは当然です。
だから、上位のクリック率は、「順位が高いがゆえに高くなっているクリック率分」というのを算出し、
その余剰分を割り引いていると考えられます。

おそらく、
「1位だから40%減(過大評価になるので割り引く)」とか、
「10位だから80%増(過小評価になるので増加させる)」などという掛け算がなされているはず。
このような正規化をすると、「順位に関係のない、純粋な広告文の魅力としてのクリック率」が出てきますので、
これを並べて比較して優劣を相対的に決め、品質スコアは決められている、と推測されます。

さらには、これだけの指標だと、「出ている広告が全部しょぼい広告文」だった場合、
検索ユーザーのためにはならないから、比較としていちばんよいクリック率であっても満点の「10」はつけにくいよね、
とも考えられます。
ゆえに、「そのキーワードの過去のクリック率」というものも、比較対象としてされているはずです。
おそらく、正規化されたクリック率を、過去クリック率と比較してプラスマイナスの味付けがされているのではないでしょうか。

これをわかりやすくイメージ化したのは以下の図です。
(あくまでもイメージです)

以上が、掲載順位のクリック差の補正、つまり「正規化」の考え方になります。
もちろん、SEOのように、
細かい重み付けはいろいろと付与されている可能性は大ですが、
(検索エンジン全体のクリック傾向、季節要因など)
まあまず間違いなくこんな感じの正規化ロジックが中心で品質スコアは原則計算されていると思われます。

※正規化ロジックについては、あくまでも私の推測です。
どなたか正確な情報をご存じの方がいたら(いないと思いますが・・・)、
あるいは私の推測はこんな感じ、
と言うご意見があればぜひお聞かせください。

まあそんなわけで、
「入札額を上げて順位を上げれば品質スコアが上がる」
などということがあり得ないことがご理解いただけたでしょうか。

他にも、まだまだ品質スコアの誤解はあるようなので、
おいおい解読していきたいと思います。

品質スコアを上げるのに重要なファクターは、
「キーワード検索結果における競合と比較して、質の良い広告文をつくり、相対的にクリック率の高いものにする」
「キーワード検索結果における競合と比較して、絶対に無視できない広告文をつくる」
というメインファクターの他にも、

・キーワードと広告文の関連性
・ランディングページとの関係
・アカウント品質

などがあり、
様々に高度複雑化しています。

正しく計算されていないようなスコアに直面することもしばしばですが、
難しいことから逃げずにしっかり向き合っていきましょう。

実践と研究、つまり「探求」が、
いままで以上に必要になってくるんでしょうね。

参考:
品質スコアについて – AdWords ヘルプ
品質インデックス | ヘルプ | Yahoo!リスティング広告







プロフィール

  • 滝井秀典
  • キーワードマーケティング 代表取締役。検索キーワード広告(PPC、リスティング広告)の研究、実践、教育をしています。会社の方では運用代行など。

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  • 株式会社キーワードマーケティング

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